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新社会人に何を伝えるべきか

                       大須賀信敬(組織人事コンサルタント)


4月、多くの若者が学生生活を終え、新しく社会人生活をスタートさせた。組織のリーダーとして新社会人に今、伝えるべきことは何だろうか。



一生懸命に働く気持ちを忘れない

新しく社会人になった若者には、ぜひ一生懸命に働くという気持ちを忘れないでほしい。昨今、「ブラック企業問題」「働き方改革」などの影響か、社会に出たばかりの若者が会社の処遇などを必要以上に気にした結果、働くという行為自体が疎かになるケースが散見されるように思われるからである。「上司の残業指示は法律上問題があるのではないか」などを気にし過ぎるあまり、仕事に身が入らないという新入社員がいるようなのである。


もちろん、違法な残業指示は決して行われるべきではなく、長時間労働がないに越したことはない。大手通信会社や大手不動産会社などの違法残業による労災認定問題は、決して看過できるものではなく、社会的制裁の対象となってしかるべき事例である。


しかしながら、社会人になったばかりの何もできない若者が、会社の処遇ばかりに気を取られて仕事に集中しないのは本末転倒ともいえる。社会人になった最初の1年目は全てが勉強である。死に物狂いで仕事に取り組み、あらゆる経験を自身に吸収し、成長しなければならない時期だからである。


それにもかかわらず、「上司の残業指示は法律上問題があるのではないか」などばかりを気にして仕事に身が入らないのでは、業務に必要な知識・スキルを十分に身に付けることが困難になる。そのような姿勢で仕事をしていては、仕事の醍醐味や面白さを感じ取るレベルに到達する前に「この会社に入社すべきではなかった」などと考え、早々に転職してしまうことにもなりかねない。


死に物狂いで仕事に取り組んだときに初めて人間は成長し、仕事の醍醐味や面白さも感じられるものである。つまり、新社会人は「与えられた環境の中で、全速力で突っ走ること」が重要なのである。その上で、会社の不適切な行為が本当に存在するのであれば、不要な我慢や泣き寝入りなどは決してせず、しかるべき対応をとって自身と家族を守ればよい。何かを成し遂げることもなく心配や批判ばかりをしていては成長など望めず、どこの会社に行っても通用などしない。


社外で勉強をして自身を磨く

また、社会に出て最初の1年は会社外で勉強することも重要である。社会人に必要とされる知識・スキルは膨大であり、会社で仕事をしているだけでは身に付かないからである。従って、会社で一生懸命仕事に取り組むと同時に、業務から離れたところでも必死に学ぶことが必要になる。


この点については、学生時代に勉強をしていても関係がない。学生時代に勉強しなかった若者はもちろんのこと、勉強した若者であっても、社会人1年目は等しく必死で学ぶことが必須である。


学ぶ内容はさまざまだが、最初に行うべきは読書である。社会人になったら業務外でビジネス書といわれる書籍を、どんなに少なくても月に1冊は読むべきである。1冊の書籍から得られる知見は膨大なため、月に1冊の読書でも1年間継続した場合には、相当量の知識を獲得できることになる。


業務外で読書を継続するという行為には、新しい知識が身に付く以外にも大きな効用がある。本を読むという、社会人としての「好ましい習慣」が身に付くという効用である。読書習慣という「好ましい習慣」は、あなたの長い職業人人生にとってかけがえのない財産になる。社会人1年目に読書習慣が身に付けば、10年、20年と長く読書を継続することが可能になり、知識・教養の向上、人間的成長などが大きく期待できる。その結果、あなたは会社に不可欠の人材となり得るだろう。


しかしながら、社会人1年目に読書習慣を身に付けられなかった場合に、その後に身に付けるのは非常に困難である。入社5年目、10年目になってから「そろそろ本でも読もうか」と思っても、体が言うことを聞くものではない。「本を読まない習慣」が体に染み付いているからである。


社会人1年目は、社会人としての「正しい考え方」「好ましい習慣」を身に付けるための時期である。その意味では、長い職業人人生の中で最も重要な時期ともいえる。あなたが社会人として大きく成長し、どのような環境でも必要とされる人材になれるかは、今年1年の取り組み姿勢に掛かっているのである。

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