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「中高齢転職者」が起こしがちな職場トラブルとは

                       大須賀信敬(組織人事コンサルタント)


中高齢の転職者が新しい職場でトラブルを起こすケースが散見されているという。果たして、中高齢転職者はどのようなトラブルを起こしてしまうのだろうか。



中高齢転職者の “2つの形態”

まず、中高齢の転職者は大きく2つの種類に分けることができる。「“特定の経験” や “特殊なスキル” の発揮を求められて採用に至っているケース」と「採用はされたが、特段、経験やスキルの発揮が求められているわけではないケース」の2種類である。


「“特定の経験” や “特殊なスキル” の発揮が求められて採用に至っているケース」とは、たとえば、営業部門の管理職経験を持つ中高齢転職者が営業部門の責任者として採用されるケースなどが該当する。この場合には、その中高齢転職者には自身の経験に基づいた強いリーダーシップの発揮が求められており、新しい職場の経営陣からは高い営業成績を上げることが期待されている。他にも、高度な技術開発を任される人材、新しいプロジェクトの中核を担う人材などが中途採用されるケースも同様である。


これに対して、「採用はされたが、特段、経験やスキルの発揮が求められているわけではないケース」とは、単に “一般社員の人員補充” を目的に採用される場合などが該当する。このケースでは採用された中高齢転職者の年齢が管理職クラスであったとしても、管理職としての能力の発揮を求められているわけではなく、“一般社員” として他の “一般社員” と同様の勤務をすることが求められて採用されているものである。


立場を理解できない中高齢転職者がトラブルを起こす

昨今、非正規社員の増加に伴い、中高齢の転職者が特別な経験やスキルの発揮を求められない立場で、いわゆる “一般社員“ として採用されるケースが増加している。このような中高齢転職者の中にトラブルを起こしてしまう方が多いようである。


たとえば、経験やスキルの発揮が求められない “一般社員” の立場で採用された中高齢転職者の中には、採用後に次のような行動をとるケースが見られる。

  • 採用直後から新しい職場の業務のやり方に異議を唱える。

  • 自分よりも年下の上司・先輩の指示に素直に従わない。

  • 新しい職場の業務ルールを守らず、勝手に変更する。 

  • 自分の前職のやり方を変えず、また、それを他者に押し付ける。

  • 同じ立場の “一般社員” に対して、上司であるかのような立ち居振る舞いをする。


中高齢転職者のこのような行動は、新しい職場の業務遂行に大きな支障を来すことになる。結果として「ミスの発生」「生産性の低下」「職場の雰囲気の悪化」などに繋がるケースが少なくない。


中高齢転職者がこのような行動をとる最大の原因は、新しい職場における自分自身の立場を正しく認識できていないことにある。そのため、単に “一般社員” として採用された立場であり、まずは上司の指示どおりに業務を遂行することが求められているにもかかわらず、自身の経験に基づいた “好ましくない言動” “過剰な自己主張” に走ってしまうのである。


また、このようなトラブルを起こす転職者は、年齢に比し視野が狭い傾向にある。そのため、「他者の立場から見たときに、自分の言動は適切か?」という視点で自身を振り返ることができない。その結果、自身の行動を適切にコントロールすることが不得手なケースが多いようである。


“トラブルメーカー” を抱え込まないために

中高齢転職者は「立場にふさわしい言動をすべきこと」「多面的な視点で物事を判断すべきこと」などを若手社員に指導すべき年齢に到達しているケースが多い。


しかしながら、中高齢転職者自身が年齢にふさわしい “ビジネススキル” “社会的スキル” を身に付けていない場合には、自分自身が新しい職場で「立場にふさわしい言動をする」「多面的な視点で物事を判断する」という行動をとることができない。結果として、中高齢転職者が職場のトラブルメーカーになってしまうことも少なくない。


企業がこのような中高齢転職者を極力、抱え込まないようにするためには、採用時および採用直後の研修等の段階で、中高齢転職者に対して「社内での立場」「求められている行動、役割」を明確に示し、誤解のないよう正しく理解させることが重要である。


また、中には “好ましくない言動” に対して度重なる指導・注意喚起を受けても、自身の行動を改善しようとしない中高齢転職者もいるものである。このようなケースでは、雇用の継続に見切りを付けることも検討しなければならないであろう。

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